中国ブランドに挑むVinFastの成功戦略
ここ数年の洪水のような中国ブランド車の新規進出によって、現在インドネシアの新車市場には12ブランド近い中国車が氾濫している。その中国車に混じって異彩を放つベトナムブランドVinFast。中国メークがあくまでBEVの販売とその条件である現地組立という『車屋の事業』に限定しているの対し、VinFastは本国のグループ会社であるタクシー会社や充電設備会社、さらにはアラブのファンドまで動員しシナジー効果によって振興BEV事業の成功をインドネシアで勝ち取ろうとしているようだ。
/ジャカルタの道路でブルーのタクシーに混じって、ペパーミントグリーンのタクシーが目を引くようになってきた。ベトナム製のVinFast製の電気自動車の(BEV)タクシーである。すでにジャカルタとその近郊で300台が稼働してるようだ。

/2月に開催されたジャカルタ国際モーターショーでVinFastはBEV車の商品ラインアップを取り揃えたベトナム色満載の展示ではあったが、派手で数の多い中国車群の中では埋没した存在であった。そんなイメージを払拭するように街中には大手タクシー会社『ブルーバード』が運営するブルーのタクシーに割って入るようにVin Fastのタクシーが増殖中である。
/運営するのはVinFast のベトナム本国のビングループのタクシー会社。インドネシア内でも自社製品をグループ企業でも使うという方法で事業の全体収益を確保しようというもの。加えてビングループはBEV普及に欠かせない充電設備の会社もインドネシアに投資。こちらはアラブ系の投資会社のファンドの支援も得ながらフランチャイジー展開を図るという。
/正直、中国ブランド車は従来の日本ブランドと比較しスタイリッシュで未来的なデザインが多く、最近のカートレンドをリードしている。安い燃料費や税金、ジャカルタ都市部の流入規制の回避などのメリットも多い。しかしながら保守的ユーザーの多いインドネシアでは、馴染みの少ないブランドとBEV浸透には時間がかかる上に中国ブランド間の販売競争も熾烈を極める。タクシー事業とのシナジーというのはいいアイデアでベトナム最大のオーナー企業VinFastでしかできないビジネスモデルではないだろうか?

/インドネシアのタクシーは(もちろんグラブタクシーも含め)、ガソリン代は運転手負担となる。一日200〜300キロ走るタクシーの使用パターンでBEVの充電費用はトヨタアバンザのタクシーと比較し約3分の1で済むという。またVinFastの車両(リモ・グリーン)はほぼ一般市販グレード同様の室内で、車両のコストを抑えるためモデル内最廉価グレードを使う既存タクシー(ビニールシートでマニュアル車)と比較し運転手も乗客もひとクラス上の快適性を味わえる。
/VinFastの発表によると、最大手のタクシー会社の保有の半分近い10,000台をインドネシアで走らせるという。BEV車とタクシーの相性の良さを生かしたがビジネス展開、業界最大手のブルーバードタクシーの巻き返し、ある意味競争相手となるグラブやゴーカーといったオンラインタクシーや販売上の競合であるBYDなどの中国ブランドの動向…ガキになるところである。
インドネシアでイノベーションを起こし『台風の目』となったベトナムブランドVinFastにご注目を。