ー東南アジアのムーブには逆らえず?ー

トヨタがついにインドネシアとタイでバッテリー式電気自動車(BEV)の本格発売に踏み切った。モデルは日本でも既に発売されているbZ4X(ビーズィーフォーエックス)。レクサスブランドとしてはUX300が両国でプレミアムBEVとして少量販売されているが、トヨタブランドの強力な販売網での全土発売はトヨタも本気でBEVの販売に乗り出すことを意味している。
BEVには巨大なバッテリーが搭載されている事はご存知の通りだ。
実はこのモデル日本では、お客が買うことができない。
すべて、ユーザーは「KINTO」というトヨタ系金融小会社が運営している月額の定額支払い、いわゆるサブスク方式のみでしかクルマを使うことができない。
著者の勝手な推測ではあるが、BEVの部品の大半を占めている「巨大バッテリー」の信頼性やサービス性、安全性、リサイクルシステムの確立などがしっかりと確認できるまで、トヨタのコントロール下で販売後の車両とお客様の面倒を見よう、というのが大きな理由ではないだろうか?
売ってしまった場合の心配事は、バッテリーの劣化に伴うお客様対応や予想不可能な中古車価格など数多い。
ある意味トヨタらしいお客様思いの慎重、親切、完璧な対応かもしれない。

でも、クルマは富裕層ユーザーの所有欲を満たすもの
しかしながら、お客様全員が買ったあとの事まであれこれ想定してクルマの購入を決めるわけではない。特に富裕層にとってはクルマは「大枚ははたいて手に入れたいもの」であり所有欲を満たしてくれるモノなのである。
所有欲モリモリの富裕層が新車ユーザーのメインであるインドネシアやタイ。さすがに月額定額サブスクリプション方式だけでは持たないので、(所有権を付与する)販売店を通じた普通の販売も行うことになったと考えられる。
bZ4Xのバッテリーは8年あるいは16万キロ保証、一回の充電で500キロまで走行が可能。急速充電(DC充電器)30分で80%まで充電が可能。インドネシアでの価格は、補助金を利用した充電ステーション設置料とポータブル充電器込で11億9000万ルピア(約1070万円)、タイでは183,600バーツ(約720万円)。
インドネシアではこの価格帯に手の届くユーザーはすでに自宅に何台もクルマを持っているので充電時間や外でのらいインフラなど気にならない。カーライフに応じて使い分けるクルマの1台とすればいいだけのことだ。現在オーダーできるBEVはヒュンダイのIONIQ5とウーリンのAIR EVとレクサスUXだけだが、購入理由は、「新しくてかっこいい」というのに加え、「車両ナンバー(偶数奇数)によるジャカルタのメイン道路への流入規制を免れることができる」というのが大きな理由になっている。
発売以降、インドネシアとタイ両国での受注は大変好調で、今オーダーしても納車は来年以降との事である。
トヨタは東南アジアでもハイブリッド(HEV)の販売を推進してきたトヨタにとって、大きな方向転換と見るべきかあるいはブームに押され商品ラインアップの間口を広げたと見るべきだろうか?